イングランド、プレミアリーグのサッカークラブ、チェルシーのオーナーを務めるロシア人実業家のロマン・アブラモビッチ氏は2日、クラブ売却の意向を表明した。
アブラモビッチ氏はクラブ公式サイトを通じて、「クラブの利益を最優先に考えて決断した」と、売却を決断した理由を説明している。
「ここ数日、メディアで報道された私のチェルシーFCの所有権に関連する憶測に対処したいと思います。以前から申し上げているように、私は常にクラブの利益を最優先に考えて決断してきました。
したがって、現在の状況において、私はクラブ、ファン、従業員、そしてクラブのスポンサーやパートナーにとって最善の利益であると考え、クラブを売却するという決断を下しました」 「クラブの売却は急ぐことなく、正当な手続きを踏んで行われます。融資の返済を求めることはありません。これは私にとってビジネスでもお金のためでもなく、ゲームとクラブへの純粋な情熱のためです」 「さらに、私のチームには、売却の純益をすべて寄付するための慈善財団を設立するように指示しました。この財団は、ウクライナの戦争のすべての犠牲者のためになるものです。これには、被災者の緊急かつ差し迫ったニーズに対する重要な資金の提供や、復興のための長期的な作業の支援が含まれます」 「この決断は非常に難しいものであり、このような形でクラブとお別れするのは心苦しいのですが、ご理解ください。しかし、これが当クラブの最善の利益であると信じています」 「最後にもう一度スタンフォード・ブリッジを訪れ、皆さんに直接お別れを言うことができればと思います。チェルシーFCの一員であることは一生に一度の特権であり、私たちが共に達成したすべての業績を誇りに思います。チェルシー・フットボール・クラブとそのサポーターは、いつも私の心の中にいることでしょう」 「ありがとうございました。ロマン」
2003年にチェルシーを買収したアブラモビッチ氏は、その潤沢な資金を惜しみなくクラブに注ぎ込み、自身の在任期間に5度のプレミアリーグ制覇、2度のチャンピオンズリーグ制覇、5度のFAカップ制覇、3度のEFLカップ制覇を経験。さらに、今月行われたFIFAクラブ・ワールドカップでは2度目の挑戦でクラブ史上初のトロフィーを獲得していた。
また、フットボールへの情熱に加え、近年は資金は出すが、物言わぬオーナーとしてチ―ムのファンからも愛されていた。
しかし、以前からロシアのウラジーミル・プーチン大統領と近しい関係が知られていた同氏は、イギリス政府とロシア政府の関係悪化によって2018年のビザ失効後は再発行が認められず、長らくプレミアリーグ観戦をできずにいた。
さらに、ロシアのウクライナ侵攻を受け、世界各国でのロシアに対する様々な形での制裁の可能性が報じられる中、イギリス政府はアブラモビッチ氏に対してイギリス国内での経済活動の禁止やオーナー権のはく奪、資産の差し押さえに動く可能性が取り沙汰されていた。
そして、先月末にはクラブの管理・運営をクラブの財団に委譲したことをすでに発表していた。
なお、気になる売却先に関しては、アブラモビッチ氏から直接売却のオファーを受け取ったとされるスイス出身のビリオネア(億万長者)であるハンスユルグ・ヴィース氏(86)が、有力な候補に挙がっている。
ヴィース氏は、世界で最も影響力のあるスイス人として知られ、アメリカでは政治のフィクサーとしても知られている。
1963年にハーバード・ビジネス・スクールで学び、卒業後にペンシルバニア州で医療デバイスメーカーの「シンセス」を設立。2012年に「ジョンソン・エンド・ジョンソン」に202億ドル(約2兆3280億円)で売却していた。個人資産総額58億ドル(約6684億円)とも言われ、世界的に有名なビリオネアだ。
チェルシーの売却を決断したアブラモビッチ氏。近年では、ルカク(移籍金1億1500万ユーロ)、ケパ(8000万ユーロ)、ハフェルツ(8000万ユーロ)、モラタ(7500万ユーロ)、プリシッチ(6400万ユーロ)といった選手を高額な移籍金で獲得しており、大型補強でプレミアリーグやチャンピオンズリーグのタイトルを目指してきました。 そのアブラモビッチ氏が去り、今後、チェルシーはまた異なるアプローチが求められることになるかもしれません